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Trash-b

幸も不幸もただ駆け抜ける一筋の

デッドエンドの思い出
よしもと ばなな / / 文藝春秋
ISBN : 4163220100


五つの短編小説。
あとがきで作者は「つらい小説」というように語っていましたが、
触れると火傷して死んでしまうような痛みなんかはなくて、
幸せも不幸も受け入れるところから始まるという強さにあふれている。
このひとの書く小説はいつも暖かくてうらやましい。

文体が平易で漫画に似ている。
稚拙だという意味ではなくて、誰にも分かるように作られた文だと思う。
それは漫画のセリフでもたいへん高度なことでそうそうお目にかかれない。
文章から流れ出る風景がヴィジュアル的だと思う。
写実に没してがちがちの油絵にしか見えない文章と比べると
すんなり絵を浮かべやすい。しかしそれが嫌いなひともいるかもしれない。

表題作「デッドエンドの思い出」には漫画「ドラえもん」に触れるシーンがあり、
「ドラえもん」に育ててもらった人の見識がかいまみえる。
「ドラえもん」、好きだし、僕。
藤子F不二雄センセが亡くなって一人歩きする前のドラえもんに育てられた人たちは、
いまどれくらいいるのかなぁ?
by trash-b | 2008-11-19 23:29 | 趣味